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名古屋高等裁判所 昭和24年(控)1671号 判決

被告人

三品良実

外一名

主文

被告人三品良実の本件控訴は之を棄却する。

被告人藤村照市に対する原判決を破棄する。

被告人藤村照市を懲役三月に処する。

但し本裁判確定の日より三年は右刑の執行を猶予する。

理由

第一、被告人三品良実についての控訴趣意について。

然しながら被告人三品良実は窃盜罪により昭和二十四年十月二十日最高裁判所に於て上告棄却の判決を受け懲役十月の刑が確定し目下受刑中の者であるから同被告人に対して本件につき更に執行猶予を求める論旨は採用出来ない。本件訴訟記録に現われた諸般の事情を斟酌するに原判決の科刑は相当である。仍て本件控訴は理由がないから刑事訴訟法第三百九十六条に則り同被告人の本件控訴は之を棄却する。

第二、被告人藤村照市についての控訴趣意について。

本件訴訟記録を精査するに、本件事犯は被告人藤村照市が昭和二十三年八月十日御嵩簡易裁判所に於て窃盜罪により懲役一年三年間執行猶予の判決を受けた事犯の以前のものに属し本来ならば同時に併合罪として裁判を受くべかりしものであつて、被告人の年齢環境並に犯罪後の情況に徴すれば、同被告人に対し、今三月の懲役を科することにより更に前に言渡された執行猶予を取消されて結局一年三月の懲役に服せしめるよりは寧ろ本件についても尚お刑の執行を猶予するのが相当であると認める。原判決が被告人につき刑の執行猶予の言渡をしなかつたのは科刑重きに過ぎるものというべく論旨は理由があるから刑事訴訟法第三百九十七条に則り同被告人に対する原判決を破棄する。然し同法第四百条但書に則り当裁判所が直ちに判決することが出来るものと認めるから更に本件につき判決することゝする。原審が認定した事実に法律を適用するに被告人の所為は刑法第二百三十五条第六十条に該当するところ前示前科に係る罪とは同法第四十五条後段の併合罪であるから同法第五十条に則り更に本件窃盜罪につき処断すべく、所定刑期範囲内に於て被告人を懲役三月に処するが前掲説示の如く被告人に対しては刑の執行を猶予するのが相当であると認めるから同法第二十五条に則り本裁判確定の日より三年間右刑の執行を猶予する。

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